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3分でわかる『蜜の島』小池ノクト作【ネタバレ結末・考察】

■タイトルと作者

『蜜の島』小池ノクト作

■どんなテーマなのか?

日本国の法が及ばぬ絶海の孤島で『死』が存在しない原始の文化と、殺人事件を究明する物語。

■巻数

全4巻完結。4巻には瀬里沢を主人公とした番外編「内務省警保局 瀬里沢極」が収録されている。

■あらすじは?

第1巻

昭和22年、終戦後に復員兵になった南雲佳哉は、戦友である貴船の遺児・ミツを彼女の母親の故郷である石津島へ送り届ける。母親は空襲で死亡しており、ミツは焼け野原になった東京で見つかった。

船に乗りあわせていた内務省調査局第一課課員の瀬里沢極は、地図上にない孤島「石津島」の名前を知る民間人の南雲を訝しみ、ともに石津島へ向かう。島では先に到着していた内務省調査局の今村均に出迎えられ、島民名簿の作成などGHQの命令で島の調査を行っていた。

ミツの母親の姓は「咲田」だったが、その家にはミイラ化した家主の遺体と、まだ時間の経っていない食事が置かれていた。村一番の年寄りである治三郎は400年前のことを今日のように語る。そして「死」という言葉を知らなかった。

今村になついていたハナという村娘が崖から突き落とされ、殺される。そして遺体を埋葬しようとした今村もまた、何者かによって殺害。連続殺人事件に、芹沢が動き出す。

第2巻

今村の所持品と瀬里沢の銃が盗まれ、南雲はミツと小屋に隠れる。待っている間に村の男・アンジに「お前たちはここにいてはいけない」と警告を受ける。そして嵐のせいで波にミツがさらわれて別れ別れになってしまう。

瀬里沢はハナの両親から「人は最後に山の天辺」に行くと聞かされ、山頂の調査に出かける。途中、ムシタロウと名乗る図体のデカイ男に出会い、彼の道案内で「カミサマの家」である神社の宮司・秋山幻峰と会う。「連中は骸をもてあそび、死体をそのまま家に置く」と話し、瀬里沢は島民の死生観が本土の人間とまったく違うことに気づく。

瀬里沢はムシタロウと共に、物置小屋で今村の遺体を発見する。そして遺体を焼こうとした瀬里沢は島民に襲われる。物置小屋に戻るとキクという少女に腹を刺されてしまう。

南雲は目覚めると、トヨに捕らわれて体を縄で縛られていたが、アンジに解放される。アンジは南雲をマグロ漁に連れ出される。

第3巻

アンジが釣ったマグロを島民にふるまう手伝いをする南雲。南雲はアンジに「弟になれ」と言い、漁師の弟子にしてやると言い出す。ロクはアンジに反対する。島民が寝静まったあと、アンジの頭が火にくべられ、体が逆さ吊りにされているのを南雲が発見。

アンジの妻であるトヨはその首を持ち帰る。南雲は悲しみに沈むトヨの世話をするようになる。噂を頼りに山を登った南雲はミツを見つける。ミツは神社へ導き、宮司がもてなしてくれたがそれが原因で宮司は何者かに殺害される。

瀬里沢はミツに助けられて手当を受け、宮司殺害の現場を検証する。そして宮司は共同体のタブーを破ったために殺されたのだと断定。「死」そのものが存在しない社会に思いを巡らせる。ミツの不思議な歌を元に、ミツとともに山頂の火口へ行き島の宗教の中心部である「神が宮の磐座」を発見する。

トヨはアンジを失ったことにより精神の均衡を崩し、「トヨの中にトヨがいる」と口走る。ロクと寝ていたトヨを見て南雲は取り乱し、トヨを連れ出す。瀬里沢と合流した南雲は、ロクのアンジと同じ方法で殺害されている遺体を発見する。

第4巻

瀬里沢はこれまでの情報収集を元に、南雲に島の人間の死生観を語り始める。「この島の人間は死なない」と。生物学的な死は「死」とみなされない島では遺体は「生きているもの」とみなされ、焼くことは最大のタブーであった。

火山の噴火が始まり、瀬里沢は島民たちに避難を呼びかけるが、それを信じない島民たちによって夜に襲撃される。ムシタロウが味方となり、瀬里沢と南雲は命が助かるがとうとう噴火が本格化してします。

ミツは別人のようになり、「聞得大君」と名乗って島民たちを海へ導き、自らも海へ飛び込む。数千年の知恵の蓄積があるシャーマンの家系の娘であるミツを信じ、瀬里沢もあとに続く。南雲はトヨと共に島に残った船で逃げ出す。

瀬里沢は島民たちがたどり着いた洞窟に避難していたが、耐え切れず崩れだす。ミツを逃げるように説得するが、それは叶わなかった。

■登場人物の紹介

南雲 佳哉(なぐもよしや):敗戦後、半島からの復員兵として帰国。戦友の貴船から妻子を故郷の島へ帰還させるように頼まれ、ミツと石津島へ行く。トヨに惹かれていく。

貴船 ミツ:貴船の娘で母親は東京空襲により死亡。南雲と共に母の故郷である石津島へ向かう。シャーマンの家系で宗教的指導者として島民を導く。

瀬里沢 極(せりざわきわむ):内務省調査局第一課課員で、GHQのお達しで「地図にない島」石津島の調査へ向かう。島でつぎつぎに起こる殺人事件を究明すべく、探偵役として活躍する。

今村 均(いまむらひとし):内務省調査局第一課所属。島民名簿の作成を行っていた。ハナに惚れていた。第二の殺人事件の犠牲者。ハナの死体を埋めようとしたところ、何者かに殺され、腕を切り落とされた。

ハナ:今村になついていた村の娘。第一の殺人事件の犠牲者。岩の上から落とされて死亡。

トヨ:村の娘でアンジの妻。アンジを失ったあと南雲の世話を受けながら、島民の中で初めて「心」を手に入れた。

キク:村の少女で今村のことが好きだった。今村の死体を隠れ家に持ち込む。

虫太郎(ムシタロウ):図体がデカく、腕っ節もある村の男。瀬里沢になついて手助けする。村人に襲われた瀬里沢をかばって死亡。

秋山 幻峰(カミサマ):山頂の神社に住まう宮司。明治14年頃から約80年間、島に住む平田派の神職。島民を教化しようとしたが失敗。ムシタロウが彼を「カミサマ」と呼んでいる。第四の殺人事件の犠牲者。ミツたちを歓待するために村のタブーを破ってしまった。

治三郎:村で一番の長老。ミツの実家である咲田家のことを話す。『死』という概念を知らなかった。

アンジ:トヨの夫で漁師。南雲を助けてくれたあと、マグロ釣りに船に乗せる。南雲を「弟」にするが、何者かに首を切られて死亡。第三の殺人事件の犠牲者。

ロク:村の男。トヨがアンジを失ったあと「嫁になれ」と誘う。アンジと同じように首を切られ、頭を火にくべられて死亡。第五の殺人事件の犠牲者。

 

■結末

ミツは島民を洞窟へ導き、噴火しはじめた島と運命をともにした。南雲・瀬里沢・トヨは助けられて船で日本へ向かうが、直前で南雲は生死不明・消息不明となる。

■考察

「心がない」という意味

瀬里沢は「この島の住人には心がない」と推察しており、その有様をギリシャの古典「イーリアス」にたとえています。何かを考えてから行動するのではなく、外からの「神の声」により人間の行動が決定される、というのです。

トヨは「初めて心を獲得した島民」として描かれていますが、今まで彼らが感じたことのなかった「自分の中にいる自分」に違和感を感じている描写があります。瀬里沢は「心」と表現していますが、正確には「自我」「エゴ」の意味に近いものと考えられます。

「人は死なない」の意味

島民たちは死なない、と言い切る瀬里沢はその意味を「外から聞こえる声」であり、「死者の声」が人々に聞こえているのだと推理しています。生物的に死んだものでも、島民はその遺体から生前と同じ鮮度で語りかけてくる声を聞き、「生きている」と認識する。

つまりそれは「個体の死」ではなく、記憶によって死してなお共同体の中で生かされ続けていることを意味しているのです。

ミツと南雲の生死は?

島の噴火と同時にシャーマンとして目覚めたミツは、神女として崩れ落ちる洞窟に島民を集めてそこに残りました。南雲が最後に見たのは、ミツたちがいる洞窟の入り口が崩れ去るさまだけで、ミツの直接の死亡は確認されていません。

7千年以上もの原始的な宗教を受け継いできたミツの家系は、当然島の噴火も経験しており、それに対抗しうる道が残されていた可能性も示唆されています。よって、ミツが生き残った可能性はあります。

 

なお、南雲は島から逃れ、アメリカの船に助けられます。船上で瀬里沢に殺人事件の謎解きを聞かされ、彼にロクの殺人を看破されたことにより、本土に到着する寸前で姿をくらまします。上陸した瀬里沢は南雲の存在を隠し、トヨだけを連れていました。トヨは南雲が「シンダのか」と瀬里沢に問いかけたことから、いくつかの可能性が残されています。

 

  1. 南雲は犯罪がバレたため、自ら海へ飛び込んで水死した。
  2. 瀬里沢に犯罪を見逃してもらい、本土のどこかへ身を隠して逃亡した。
  3. 小舟に乗って石津島へ戻った。
  4. 瀬里沢によって葬られた。

 

瀬里沢がわざわざ「私のほかは島民ひとり」と本土でごまかした報告をしていることから、生存の可能性は高いです。


■コメント

人当たりはいいが、決して心を開かない島民たち。そもそも彼らには「心」が存在しなかったーー本土日本とまったく異なる、古代からの文化を引き継いできた絶海の孤島に暮らす人々。主人公は一応は南雲になっていますが、実質の主人公は探偵役の瀬里沢になっています。

■作品への評価

数千年もつづく古代の原始的な文明を持つ島、という不思議に満ちた物語。異分子である南雲と瀬里沢がその共同体に入ってしまったことにより、殺人事件がおき、その謎解きが展開されます。

「死」を超越して生きる人々の行動原理は瀬里沢の推理によって明かされていますが、「心」を獲得し、唯一生き残った島民のトヨ、そして突然姿を消してしまった南雲の行方など、作中ではっきりとは描かれていません。最後の最後まで、謎の残る作品でした。

 

 

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