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『声なきものの唄~瀬戸内の女郎小屋』安武わたる【ネタバレ結末】

■タイトルと作者

『声なきものの唄~瀬戸内の女郎小屋~』安武わたる作

■どんなテーマなのか?

父を亡くした姉妹が女郎屋に売られて引き離され、妹チヌが姉との再会を希望に過酷な運命を生き抜く物語。

■巻数と試し読み

1〜3巻以下続刊

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■あらすじは?

【第1話】 女の競り市

チヌとサヨリは唯一頼れた父親を亡くし、姉妹で島の外にある遊郭へ売られる。競りにかけられたサヨリは瀬島に連れ去られ、チヌは売れ残って下層遊郭「須賀屋」の下女として落札された。姉と離されて泣き止まぬチヌだったが、下働きに慣れた1年後「小菊」の源氏名を与えられて初見世に出される。絶望したチヌは海に入るが、青年の小舟に助けられる。

【第2話】女郎の母性

若水家の当主・若水公三郎に命を助けられたチヌ。誰も逆らえない地主であり「若様」と呼ばれる彼の庇護を受けて、チヌは下女に戻される。「須賀屋」の女郎のひとり・小梅が病気で倒れて店の運営が立ち行かず、見るに見かねてチヌは自ら見世に出ることを申し出る。女郎として生きる覚悟をやっと決めたチヌであった。小梅のために若様から魚をもらい、食事を作るが小梅の病気が労咳だと判明する。須賀屋の主は追い出そうとしたため、実家のために小梅は自害してしまう。

【第3話】東陽楼の姐さん

須賀屋は潰れ、チヌは一流の「東陽楼」へ振り分けられることになった。「東陽楼」では「千鳥」と源氏名を変える。若様に気に入られているチヌをエサに紅緒太夫の指導が始まる。音曲、生け花、書、絵、どれもうまくいかないチヌだったが、若様からもらった絵本で字を覚える。若様の酒宴に出るチヌだったが、先輩たちのイジメで髪結いもできなかった。若様はチヌとは本を読むだけだが「旦那」として世話をする。嫉妬した紅緒太夫はチヌをさらうように裏で命じ、あやうく遠くへ売り払われそうになるが助けられる。

【第4話】弱き者たち

田上フミという流れ者の女郎がやってきて「小蝶」と名乗る。姉に似た面差しの綺麗な女だったが、頭がゆるく道理のわかからぬ子供のように振る舞い、寝小便や盗みを働くなど周囲を困らせた。厄介者扱いされた小蝶は「おちょろ舟」という懲罰的な仕事をさせられる船に乗せられるが、チヌは後見人として一緒に乗り込む。荒くれ者たちから小蝶をかばってやったチヌの親切を知って、小蝶は問題を起こさなくなった。

【第5話】鬼の棲家

美緒の兄・堀田一彦が訪ねてきた。美緒の実家は落ちぶれた名家で、兄の学費のために美緒は売られたのであった。賢く立派な兄様、と慕う美緒だったが、じつは学業を捨て賭場で負けて妹を借金の片にしてしまっていた。「味つ屋」の主人に身を差し出した美緒をチヌが救いだし、「腐れ外道が」と兄を殴るチヌ。美緒は強がるが、ひそかにチヌに感謝する。

【第6話】知らないお母さん

巴が検査で引っかかり、チヌが「千鳥太夫」として看板を背負うことになった。巴の見舞い途中で望月巳奈子という老婦人と知り合い、母のような懐の深さに惹かれて通うようになる。だが、チヌの客としてやってきた男は巳奈子の夫であった。チヌが女郎だと知って怒り狂う巳奈子。巳奈子の気持ちを知って夫は遊郭を去り、良き夫になる。

【第7話】若様の過去 前編

帝大生だった若水公三郎の恋を描く。父は成り上がり者、母は落ちぶれた直参旗本の娘で別居していた。美しい少女・志方寿子と出会い、惹かれる公三郎だったが、若水家は寿子の敵だった。高利貸しをした若水家のせいで寿子の実家は破滅し、養女として志方男爵の娘となった。

【第8話】若様の過去 後編

志方男爵は寿子を自分のものにし、寿子は抗えず公三郎を慕いながらやせ衰えていく。寿子が男爵から無体を強いられていると知った公三郎は、寿子と共に逃避行する。二人は西伊豆の漁師町でひっそりと夫婦として暮らし、お腹には子供ができて幸せを感じる。だがすぐに見つかってしまい、逆上した男爵は寿子を誤って刺してしまう。愛する人を失った公三郎は「古今集」の恋歌だけを胸にむなしく生きるようになる。

【第9話】見えない子

松ヶ枝楼の女郎・一枝のもとに子供の幽霊が出ると噂になる。幽霊に興味をもったチヌは、体調の悪そうな一枝に同情してたびたび差し入れをするようになる。だが、子供の霊は頻繁にあらわれて一枝を苦しめ、「これは腹ん子だ」と思った一枝は海に入ろうとしてチヌに助けられる。「腹の子は家族」だと気づいた一枝は、身投げしたふりをして松ヶ枝楼からうまく逃げ出した。

【第10話】やさしい子

「九持堂」の若旦那・九持鶴松に通われるチヌだったが、彼は若様をバカにするために来ていた。チヌがつまらない女だと悪口を言うことで、公三郎を貶めようとしていたのだ。だが、鶴松の母が乗り込んできて商売物をただで女郎にくれてやった、と叱る。チヌは客として来た鶴松をかばい、鶴松の母に気に入られてしまう。以来、鶴松にも惚れられ身請け話まで出る。楼主に断られ、思い詰めた鶴松はチヌを監禁してしまう。

【第11話】牛の瞳

巴姐さんの過去エピソード。士族の宇原家のお嬢様だった明子(巴)は美しく、活発な少女だった。使用人の徳次はとろ臭いが明子のことを慕っていた。父が落馬して亡くなり、明子は借金で売られて女郎になる。お嬢様育ちの明子には耐え難い生活だったが、玉吉という男に優しくされて貢ぐようになる。遊郭の使用人として入った徳次は、明子が玉吉に騙されていると知って玉吉を命がけで守った。明子は今は「巴」と名乗り、年季があけて徳次と夫婦になるのを待つのであった。

【第12話】からゆきの女

吉元タカという金持ちで「からゆきさん」だったという噂のある女が遊びに来る。タカは「東陽楼を買いたい」と言い出し楼主を困らせ、売らないと言うと裏から嫌がらせを始めた。チヌはタカに姉が外地に売られたかもしれないから、とからゆきの話を聞く。貧しい小作農の娘だったタカは、外地で女中の仕事があると騙されて船に乗せられ、「からゆきさん」になった過去を語り始めた。

【第13話】おいらんおタカ

タカをやろうとする前に、女郎のひとりが首をくくり無縁墓地へ放り込まれる。ゴミ扱いされる女を見て、自分はゴミにはならないと決意したタカは芸を磨き、美しく着飾って「おいらんおタカ」と呼ばれるようになる。故郷の妹が病気になったと手紙が来て楼主に借金を申し込むが「女房になれ」と迫られて拒絶。その際はずみで頭をぶつけた楼主が亡くなり、タカは英国人ポール・グローナーに助けられて彼の農園へ招待される。

【第14話】愛の檻

ポールのゴム農園の屋敷で暮らすことになったタカ。マリア・ジェーンの二人の婦人がすでにおり、3人目となるタカは「アンナ」と名付けられる。紳士然としたポールだったが、実は酔うと見境なく女性に暴力を振るうことに喜びを感じる男だった。

いたぶられる女たちは金のために耐えてきたが、ついにマリアが亡くなってしまう。ジェーンは逃げ出し、残されたタカはポールが身を持ち崩すようにうまく仕向け、脳卒中になった彼を10年面倒見たあと、遺産の半分を受取り日本へ帰る。

【第15話】望郷

15年ぶりの故郷に帰るタカは、実家で弟の祝言を見て驚く。だが妹のヤエが病気で亡くなったことを知らせずに騙して送金させ続けた挙句、祝いの席への出席を断られて兄弟たちがからゆきの自分を「恥」と考えていると知り、タカは腹いせに東陽楼を買い取ることを決めたのだった。

東陽楼への嫌がらせで客足が遠のき、女郎たちの意気も下がっている中、若様が貸し切りにして盛り上げた。その後放火騒ぎまで起こり、やり過ぎだとタカは石打ちにされるが、タカの苦労を理解して感謝していた身内がかばう。タカは結局買収をあきらめ、自分の様子を心配して来た張と海を渡り再出発した。

【第16話】姉やん

気分を変えるために東陽楼の女郎たちが伊布大社で巫女舞を披露することになった。チヌは海運社主の後藤田甚八に気に入られ、若様のことでからかわれる。

ところが奉納舞の折に姉・サヨリを見かけて舞台から降りるチヌ。若様に恥をかかせ舞台を台無しにしたことで謹慎処分に。サヨリは老人と共に去っていったが、以前の優しい姉ではなかった。

【第17話】変身

チヌと引き離されたサヨリのその後の物語。人買いの瀬島に連れられてお姫様のような贅沢をさせてもらう。「お香」と名づけられたサヨリは、瀬島の恋のトリコになり、素朴な漁師の娘から変身する。妹のチヌのことなどすっかり頭から消えてしまい、瀬島に夢中になるサヨリ。一方、チヌは姉のことを想いながら、謹慎処分のため下働きをさせられていた。

■登場人物の紹介

安藤チヌ:主人公でサヨリの妹。瀬戸内海の伊之島出身。14歳の時に父が漁で亡くなり、姉妹はバラバラに遊郭へ売られた。活発な性格。源氏名「小菊」→「千鳥」。

安藤サヨリ:チヌの姉で、別れた当時は17歳。亡き母に似て器量良し。瀬島という男に落札されて連れて行かれた。その後、瀬島に恋してチヌを忘れてしまう。

須賀屋の楼主:廓の中では下の位の「須賀屋」の主人。口うるさい女将のフォロー役で普段は穏やかだが、時に厳しい顔も見せる。小梅の騒ぎで店を潰し、夜逃げした。

若水公三郎:「若様」と呼ばれる若水家の当主で美男子。地主であり有力者として尊敬される。女嫌いと言われているが、チヌに心を開く。

小梅:須賀屋の女郎。田舎に年老いた両親と二人の子がいる。労咳を患い

栄太:「東陽楼」の小僧。

紅緒:「東陽楼」の「お職」最上位の女郎。若様に惚れており、チヌに嫉妬する。

美緒:本名・堀田茜。紅緒の禿だったが、紅緒が去ったあとチヌの世話をする。400年続いた名主の家出身で兄・堀田一彦がいる。

藤富:「東陽楼」の楼主。チヌを須賀屋から買い取った。

巴:紅緒の後に「お職」になった太夫。元は士族の娘で家の借金を返済するために売られた。本名・宇原明子。牧場の使用人・徳次と年季明けに一緒になる約束をしている。

田上フミ:播磨から流れてきた女郎「小蝶」。サヨリに似た美女。落ち着きのない子どものような性格でこの世の道理が理解できず「びっくり箱」と呼ばれる。

志方寿子:大学生時代の公三郎の想い人。若水家のせいで両親が亡くなり志方家の養女になった。公三郎を刃から守って亡くなる。

九持鶴松:老舗の薬問屋「九持堂」の若旦那。しつこいうえにチヌを馬鹿にする。若様に対抗心がある。

吉元タカ:小作農の娘で妹や家族に美味しいものを食べさせたくて外地へ働きに出た。だが、騙されて「からゆき」にさせられる。のちに財を成して大金持ちになり、日本へ戻る。

ポール・グローナー:イギリス人の紳士でマレーのゴム農園主。普段は紳士的だが、酔うと女に暴力をふるう性癖があり、それが原因で婚約も破棄されイギリスの親族から追いやられた。使用人の張がそばで仕えている。

後藤田甚八:海運会社の社主で羽振りがいい男。磊落な性格でチヌを気に入る。

瀬島:サヨリを買った女衒。母親のせいで女に憎しみを抱いている。

■コメント

姉と離れ離れになってしまったチヌは、いつか巡り合えるのか・・・と、若様という稀有な存在に守られながら「千鳥太夫」として一本立ちするチヌの行く末が幸せであってほしいと願わずにいられないです。

なんてむごい、という辛い出来事を乗り越えてたくましく生きていくチヌ。密かに若様に恋をしているものの、若様は昔失ってしまった妻の思い出に縛られており、チヌがそこに入り込む隙間があるのか。

ハラハラしつつも、若様が時折、チヌに対して嫉妬を見せるような描写もあり、妹のような存在から女性として見つつあるのかなと感じます。

遊郭に生きる女郎たちそれぞれに人生のドラマがあって、脇役にも焦点を当てたエピソードも非常に面白かったです。

■作品への評価

単なる遊郭の物語にとどまらず、そこで生きる人々の人生が鮮やかに描かれている大河漫画の雰囲気を漂わせています。

きれいごとだけでは生きられない、女郎としての現実に向き合いながらも、ヒロインは人としての優しさを忘れず素朴な少女だった頃そのままに人生に向かい合います。

傷ついた過去を持つ若様との恋の行方、そしてチヌの潔い生き方に女郎漫画という枠を超えて胸に感動が残るお話です。

 

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